魔人ムウワ

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   前から後ろに流れていく無数の扉からは特に何も出てくることはなく、ただ私はひたすらに通路を前に進むだけでいた。  しかし、長い。長いぞこの通路。長すぎる。このままでは魔王に辿り着く気がしない。なんなんだこれ、まっすぐ進んでいるように思えて実は曲がったりしているみたいな道か? 迷路システムか? ―――あ、そういうことか。  私は一番近くの扉を開ける。その先はやはり道。扉が横に並ぶ道が、今私がいるのと同じような道が続いている。  フーム。果たしてこれは進んでいい道なのかどうかだ。私はその隣の扉を開ける。そこもやはり同じで、扉が並ぶ延々と続く道。  私はそれからひたすらに扉を開けることにした。開ける度に同じ光景ばかりで飽きてしまったが、そんなことは言っていられない。魔王の元にいるだなんて、カナリア姫はいったいどんなことをされているか分からない。  私は無心になって扉を開けることに集中した。すると一つ、今までとは違う先が見える扉を発見した。  その扉の先は、今までとは違い、また魔王城にはやや不似合いな、神秘的な光を放つだけであった。少々怖い気もするが、恐らくこれ以外に他はない。あたりを見回せば扉が開かれているものばかり。私は決心してその先へ足を踏み入れる。  入ったところで光は一向に消える気配が無く、先が見えないのでとりあえず扉を閉めた。すると光はみるみるうちに消えたかと思うと、再びあの光景が。 「……思わせぶりは勘弁って、こういうことだな」  なんか違う気もするが、まあ、仕方ない。後ろを見れば当然扉は消えていて、再び私はまたもや扉をひたすら開けていく作業に入った。
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