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「よくぞここまで来た! 我が名は魔王デスター!」
魔王はそう潔く名乗る。ついさっきまでなんかこう人を待たせて置いてこれかよ。まあいいけど。
「我は魔人ムウワ」とりあえず名乗り返す。
「ほう、魔人……つまりグラキオスを倒したのか」
「あ、まあ、そうなるな……」
「まああいつ、大して強くないからなー」
あー、そうなんだ、知ってたんだー。
「というか、魔人さんだから別に私たち、敵ってわけじゃないよねー、もうそのー、魔王っぽくしてるのやめてもいいー?」
「あっどうぞ」
魔王は肘置きにあるボタンを押す。すると背もたれがゆっくりと倒れていく。そこに魔王は優雅に寝転がった。
「さ、まあゆっくりしてってね」
「あー、ハイ」
……。
気まずいわぁ。
なんかちゃっかり悪魔みたいなやつにお茶を出されてそれを飲む。なんか地味にうまい。別に毒入ってるわけでもないし。いやなんか、うん。えー、うん、まあ結構あるあるな気もするよね。ちょっと気が抜けてしまう魔王みたいな、うんうん、近年あるある。まあそうか、魔王に転生するやつとかいるし、平和主義な人が転生しちゃったのかな、うん、そういうことにしよっと。
「……その、魔王殿」
「んー?」
「その……カナリアという女を一目見たくて我はここにやって来たのだが……」
「ん? あ、カナたん?」
カナたん?
「あー、うんうん、カナたんね。ちょっと今ケフェルウスにプロデュースしてもらってるから」
プロデュース?
「そうそう、あのー魔界No.1アイドル育成プロジェクトに応募してさぁ、そしたら何? えっとね、書類応募が通過しちゃって、第二オーディションに実技あるから、それのプロデュースをしてもらってて……」
「そ、そのケフェルウスに?」
「そうそう、一応三幹部と兼ねてもらってるんだけどさぁ」
「でしょうね!!」
なんかそこらへんだと思ってたよ!
「そう、あいつ無駄にそういうセンス? がいいからー、任せてるんだよね、いろいろ」
「あ、はぁ……ってことは要するにーそのぉ、カナリア姫は無事ということで?」
「あ、うん。普通にNo.1目指して頑張ってます! 応援してね! だから…」
うーん…。
カナリア姫の無事を確認(?)し、魔王と別れを告げ魔王城を出る。なんかこう、あまり怖くなかったな……ちゃんとプロジェクトが成功して、魔王の本来の目的を思い出して勇者と接戦をして欲しいなぁ。
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