フェルナイン・アルカード

4/7
前へ
/357ページ
次へ
  「勇者様、勇者様っ! どっどどっどうか私めを貴方のおっ、お傍に! お味方に! お仲間にしていただけないでしょうかっ!」  とか、 「勇者よ。この私を味方にしないか?」  とか、 「勇者さまぁ、私ィ、こう見えて強いのでぇ、一緒に連れてってくれないかなー? とか思ったりしてぇ」  など。  まあ言う台詞はたくさん思いつく。ああ沢山。本心は置いておいてもうぽんぽこぽんぽこ思いつく。  そう、私はただこれを勇者一行の前に立ちはだかって言って反応を楽しむことが好きなのだ。それが生き甲斐だ。特殊だろう? えっちょっと引いた? そういうの、ナシで。  毎回毎回、勇者一行が村や町やに行く度に私はそれをする。ああ、それがために私は勇者について行っている。いわば影の勇者一行みたいなものである。  だから私は剣を持っている。ちなみに実力もそれなりに持ち合わせている。自称イケメン騎士やってるからね。嘘だよ。  もし勇者が道中危険な魔物に遭遇すれば、それはグッドタイミング。「えぇーい!」というような感じでずばっと魔物を倒し、「君、強いね」と感心された時、「よかったら同行しようか?」などという流れが来るわけだ。  だがしかし、そんなこといちいち受けていたら今頃勇者一行はとんでもないことになっているだろう。勇者一行に入りたい者など、私の他にも盛りだくさんいるだろうから。  それに、勇者はどうやら味方の数をある程度決めているようだ。まあそうだろう。自分が率いるのだから限界は分かるだろう。勇者含め四人、という様子でいる。それは道中メンバーチェンジがあったり離脱だったりしている。  そして私は、必ず勇者一行が四人揃っている時にのみ「勇者様、どうか私めを仲間にしてください」と言う。何故かって? 簡単だ、また言わすのか、まあいいだろう。私はこの行動を楽しみにしている。決して勇者一行に入ることを目的としているわけではない。あくまでも、勇者一行に入りたがる人を演じることを楽しみにしているのだ。決して、入りたい訳では無いのだ。むしろ入りたくねーよ。
/357ページ

最初のコメントを投稿しよう!

436人が本棚に入れています
本棚に追加