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さてさてそんなことを思いふけっている間に村人ロードを後にした勇者一行がやってくることを確認した。人気がいない、村長とか村民がいるわけでもない。勇者一行と、木々があるだけ。その木々の1本に私は在る。
勇者一行は私など知らないというように――まあ知らないのだろうからどうしようもないが――ずんずんと進んでくる。
よし、よしよしいいぞ。来い来い。おお、いいぞいいぞ。早く、早く、はやーく。
勇者一行は私の横を通り過ぎた。今だ!
「貴様が勇者か」
第一声、完璧に決まった。
あえてである。あえてこの口調、態度である。冷静に考えろ、今の私のこの姿で「ゆっ、勇者様ですね?」みたいな気弱キャラでいられるか。「あーん、勇者様ねぇん?」なんて可愛いキャラでいられるか。
切れ長の目を文字通りギラギラとギラつかせながら、勇者に私を敵かと思わせる様子で私は演じているつもりでいる。
ああ、いいね、今私は最高に至福のときを味わっている!
勇者一行は、勇者をはじめものすごく困ったような顔をしている。あれっ、メンバー、変わってるね?
前回私が今とは別の姿の時――毎回毎回同じ格好だと呆れられて味方にされそうだ、それにそれでは面白くない。毎回毎回素直に仰天な反応を見ることが楽しいのだ――には、勇者、女騎士、姫、男魔道士だったのだが、姫の代わりに男の騎士がいた。見るからに、恐らく黄金騎士。
黄金騎士というのは文字通りキラッキラな騎士である。主には王族、貴族の傍に仕えている、まあエリート騎士だ。そこらから出た者や、戦果のない騎士はまずなることは必ずない。ちなみに私はなろうと思えばなれるような気がする。まぁ、なる気は無いがな。
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