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午後1時。
【飲酒運転撲滅の会】の事務所のインターホンを押すと、男性が出てきた。
「こんにちは、山下さんですね。倉田です。どうぞ」
促されるままに中へ入り、席へついた。
俺は全てを正直に話した。
過去の事故のこと。
一人の大切な親友の命を奪ったこと。
「・・・そうでしたか。良いですか、山下さん。貴方が起こした事故で大きな傷を負ったのは雄一さんだけじゃない」
倉田さんが静かに、俺の目を真っ直ぐに見つめる。
「雄一さんのご家族や、他の友人にも大きな傷を負わせたんです。それも下手したら命取りになるような。悲しみから自殺を考える人もいるのですから」
「・・・はい」
俺は、頷くしか出来なかった。
「私も含め、会に居るのは被害者の関係者が殆どです。辛く当たる人も、もしかしたら居るかもしれません。それでも大丈夫ですか?」
それは覚悟している。
「はい。それでも、事故を減らしたいんです。お願いします!」
俺は懇願した。
倉田さんも、最初は少し渋っている様にも見えたが、最後には「これから宜しくお願いします」と
手を差し出してくれたのだった。
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