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まず向かったのは、前に馬の根付を買ったあのお店。中はけっこう雑然としている。しかもジャンルもバラバラ。なんか、昔好きだった雑貨屋を思い出す感じだった。
私が向かったのはその一角。色んな本が置かれている場所だった。
「本?」
「そう。お会計の時少しだけ見たんだけれどね、気になってるのがあって。ただ、あの時は時間もあまりなかったし、迷っちゃって」
私はいくつかを見回し、気になったものを手に取った。
それはこの世界の料理本。しかも、家庭料理が沢山載っている。こういうのって、宮中にはないから気になってしまって。
中を見てみると文字だらけ。でも、基本は何とかできるから作れそうだ。
「料理本?」
「あぁ、うん。気になってたんだ。元の世界では結構料理作ってたから、こっちのも気になってて。それに、藍善にも食べて欲しいしね」
そうなのだ。前に藍善に料理を作った時にはっきりと分かったのだが、藍善はとにかく好き嫌いが多い。特に肉と魚は明らかに避けている。軍人なんて、体が資本だろうに。
私が言うと、藍善は目を丸くして、次には苦笑した。
「俺に、作ってくれるのだろうか?」
「勿論。でも、嫌いなものでも一口は食べてね」
「…善処する」
本当に困った、というか半分拒絶にも見える渋面が浮かんで、渋々そう約束を取り付けた。
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