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そう考えると、藍善の医者嫌いも納得できる。子供の頃に嫌な思い出が多いと、嫌いにもなるだろう。
まぁ、問題は彼が既にいい大人だってことだけれど。
ふと考えて、私はポンと手を打った。そして、黒耀にフッと笑った。
「私が誘いだせば乗ってくるかな?」
「え?」
思いがけない話だったのか、黒耀の目がまん丸くなる。それに、私は悪戯な笑みを浮かべた。
「藍善に嘘をつかなければ、分からないよね? 私は誘い出すだけだから、黒耀は罠を張ればいいんじゃない?」
「どうやって?」
「えっとね…」
思いついた作戦を黒耀に耳打ちする。最初は疑っていた黒耀も、話すうちにどんどん乗り気になったみたいで、最後にはニッと笑った。
「よし、それでいこう! 春華ちゃん、よろしくね」
「勿論、任せておいてよ」
私は満面の笑みで引き受ける。
何よりも藍善の体の事が心配だ。ちょっと怒られるかもしれないし、嫌われるかもしれないけれど、彼の事が心配だから協力は惜しまない。
決行は次のお休みの日。私は気合を入れたのだった。
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