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薄暗かったけれど、確かに沢山の宝石があった。なるほど、納得だ。
「玄武の里は沢山の宝石が取れるのですわ。それに、とても強い力を秘めておりますし」
「じゃあ、これも?」
「見た所、これらは力を抜いてあるものです。だからこの値段で出せるのですわね」
値札を見ると、一つ銀貨十枚。これが高いのか安いのかは判断がつきかねるけれど、多分安い方なのだろう。
「一つずつ、買う?」
「可愛すぎませんか? 春華様なら似合いますが、私が持つには少し」
「そんな事ないよ。李燕は綺麗だけれど可愛い部分もあるし」
何の気なしに言うと、李燕は顔を赤くした。はて、何か間違いを言っただろうか。
店先でそんな話をしている。するとそこに、硬い足音が近づいてきていた。
「春華殿?」
「え?」
思わず顔を上げた私は、そこに立つ藍善を見つけて驚いた。彼とこうして日中に合うのは今までなかった。現在仕事中のはずだ。
「どうしたの?」
「市中を見回っている所なのだが、姿をみかけたので」
市中の見回りってことは、パトロール? 軍って、そんな事までするんだ。
藍善は近づいてきて、ふと私達が見ていた店先を見る。その目は間違いなく、あの根付を見ていた。
「可愛いよね、あの根付」
「え? あぁ」
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