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騙し打ち
休みの前夜、私は仕事から帰ってきた藍善を待ち構えていた。
「藍善、ちょっとお願いがあるんだけど…」
「お願い?」
意外そうな顔をされて、私は苦笑する。その藍善の前に、私は買ってきた料理本を出した。
「作ってみたいんだけど、味見お願いできる? できればその前の買い物から」
「あぁ、それは構わぬが。本当に俺で良いのか?」
疑う様子もなく笑ってくれるのは、少し心苦しい。でも、嘘は言っていない。私は明日本当に、料理を振る舞うつもりなのだ。
「うん、お願い。時間のかかる物は用意してるんだけど、生ものは当日仕入れたいし、自分で見て買いたいから」
「何を作るつもりなのだ?」
「混ぜご飯と、合わせて味噌汁、他に野菜物一品と、目玉になりそうなのと、食後の甘味」
「そんなにか?」
「他の人にも振る舞いたいんだけど、まずは藍善に。この間約束したもん」
既にあく抜きだったり水に浸さなきゃいけない物は準備済み。メニューもある程度決めている。私の世界の料理も織り交ぜてだ。
「俺で良ければ、付き合おう」
「有難う。じゃあ、朝にね」
「あぁ」
軽く約束して、私は花離宮へと引っ込む。今の所、ばれていないようだった。
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