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カフレと呼ばれた大きな街には、神の手を持つといわれる一人の画家がいた。彼が想いを込めて描かれた絵には魂が宿り、キャンパスから飛び出して動くという。
そんなのは眉唾もののデタラメなうわさだろう、とシアンは考えていた。もしそれが本当ならばなんと背徳的な力なのか。神の領域に近づこうとするその力は恐ろしいものだとも彼には思えた。
しかし、こうして今実際にその力を見てしまうと恐ろしさを凌駕する感情が彼を襲う。
キャンパスから出てきた彼女──マゼンダの姿は美しかった。
長くウェーブのかかった亜麻色の髪も、陶器のような白い肌も、ザクロのような色の唇も何もかもがそのままである。しなやかな肢体が軽やかに体のまわりで踊り空気を動かす。着ている白のワンピースは彼女にとてもよく似合っていた。
マゼンダのように。そのままに。
絵から飛び出した彼女はシアンに向けて、にっこりと微笑んだのだった。
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