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 そうつぶやいて「いや、実際魔法か」とシアンは微笑んだ。それはフーノにとって初めて見るシアンの柔らかな笑みだった。どこかすっきりしたように見えるその表情は、この家に初めて来た時のような追い詰められた雰囲気はなかった。  救えたのだろうか──とフーノは眉を心もとなく下げる。  シアンはフーノに近寄ると、コインの入った袋を手渡した。今回の依頼に対する残りの金額がそこに入っていた。 「ありがとう。素晴らしい絵だった」 「どういたしまして」  チャリン、と袋を揺らしフーノは眉を八の字にして笑った。 「あなたはこれで少しは救われたのかい」  その言葉はシアンからすれば年下からの鼻持ちならぬ問いだったに違いない。しかしフーノの表情がどこか寂しげに見えたシアンは、ただ小さく息を吐き出した。 「……ああ。もうここにあったモヤは消えたよ」  胸に手をあてがいつぶやくシアン。フーノはそんな彼を正面から見上げて目を細め、そして床を見た。 「そうか。なら良かった」  契約完了をした二人はもうそれ以上話すことはなかった。シアンは上着を手に取り、フーノは彼を見送るために玄関にまで足を運んだ。その足元をまたあのマヌケな化け物ヨダもついて来ている。彼も見送ってくれるのか、とシアンの口元が綻ぶ。そしてその口からついと出た言葉は、シアンにとって画家に伝えてみたい言葉だったのだ。 「ヨダは幸せだと思うよ」 「え?」     
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