居酒屋で賞取っちゃいました

橙色に染まった提灯の光が私の心を温かくする。酒に酔った勢いで私は周りの誰よりも大きい声で話しをしていた。

「でさ、〇〇課長はほんま口先だけで何もせえへんねん。前なんかな偉そうに書類渡して頼むわって言って、自分はそのままタバコ吸いに行くんやで。信じられへんやろ？ ほんまに腹たつわ」

ジョッキを通して自分の血圧が上がって行くのが分かる。今日の上がり方は産業革命並みだ。

同僚は何も言わない。いつもは同調してくれるのに今日はただうんうんと頷くだけ。その時・・・

「おめでとうございますー！ 今月当店愚痴り賞に輝いたのはあなたです。あなたには本日の代金無料券とその栄光の愚痴っぷりを来月から約1ヶ月間あちらのテレビでお流ししますー」

威勢の良い店員の声が店内に響き渡る。

会社から最寄り駅のみんながよく行くこの居酒屋。私はもう二度と行かなかったのは言うまでもない。

友人はこの賞を知っていたのだろうか？

仕事屋でニヤつくその顔に、私は岩塩を投げつけたかった。