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ま、まぁ、、、騒ぎに乗じてなんとかなるか?
スヴェンは民家の屋根を蹴りながら城へ向かって進む。
熱い顔が早く冷めるよう祈りながら、今必要なのは何より状況を整理することだと自分に言い聞かせる。
こんな国兵や貴族たちの兵、また私達がいる中でのバイルシュミット卿への暗殺行為。
あの男、計画性なんてない単独犯だろうけど、死を覚悟の上の行動、、、
いや、計画性はあったのか。
バイルシュミット卿が民衆の前に立つ機会はそうない。そう考えるとこういう機会を伺っていたのかもしれない。
動機は、、、充分にある。
ただ貴族だ、というだけで恨みを買うこともあるし、私も貴族は金を搾取する悪い奴等だと思っていたし、実際国民から見るとそうなるのだろう。
貴族の代表格だから、バイルシュミット卿を狙ったのもわかるし、私だってそっち側ならそうしただろう。
でもこちらから見ると、それは大きな間違いだということがわかる。
バイルシュミット卿はそっち側にとっても今はまだいなくてはならない存在なのに!
いや、それ以前にそもそもなぜ未然に防ぐことができなかったのか?
バイルシュミット卿には透明の護衛の人がついているんじゃなかったの??
「あまり深く考えるな」
スヴェンが言った。
「兄上が刺されたのはどうせたいした理由ではない。」
「そう、、なのかな、、、」
本当に大した理由ではないのだろうか、、、
それとも私が考え込んでいるのを見て気遣って言ったのかな?
「下りるぞ。」
あっと言う間に城だ。
庭に降り立つとスヴェンは私をおろした。
「馬車より早く着いたな。」
「あ、ほんとだ。」
大きく開け放たれた門から馬車がこちらへ向かってくるのが見える。
城の中からはヒューイさんを連れてライトがこちらへ走ってくる。
「陛下、早いお着きで」
「うん、ライトありがとう。」
「いえ。」
「状況は聞いているか?」
スヴェンがヒューイさんに聞く。
「はい、粗方聞いております。」
「お前の腕を信じている。」
「はい。最善を尽くします。」
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