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第1幕 高花と星(こうかとせい)
「兄さん…」
そう呼ばれる“彼”は、薄暗い部屋の中で布団に横たわっていた。彼の和服の青色だけがこの部屋の中で色彩を持っているように、室内は殺風景で。
彼の傍らで咽び泣く黒髪の美しい少女がいる。
少女の紅い唇が震えているのは、彼がもうじき寿命を迎えるからだ。
「多々羅…」
少女の名を喉だけで発音したのだろう、彼の口の中でその言葉が吐息に変わった。
少女にその声は届かないで、彼女は涙を零している。
少女は彼の手に縋り付き、その燃えるような瞳を彼に向けて言った。
「兄さん…このまま死なせやしない…
どんなことしたって必ず助けるから…」
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