第1幕 高花と星(こうかとせい)

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「星の手が冷たくてビックリしただけだよ! 星のこと避けたわけじゃない… ごめんなさい…わたし星のこと大好きだよ…!」 熱弁する高花の目には薄く涙が浮かんでいる。 星はそんな彼女の真っ直ぐさにたじろぎ、何も言えずに口元をキュッと結んだ。 「わたし…傷つけるつもりなんて…」 言いかけた高花の後ろから、「西沢!」と呼ぶ声がした。クラスメイトの男子たちだ。 この騒ぎを聞きつけて集まって来たのだろう。 高花が星から手を離し、振り返る。 返事をしようとして、出来なくなった。 急に星が高花の手を引いて、彼等とは逆方向に道を歩き始めたからだ。 「(せい)!?」 「帰りますよ」 騒めきの中を、(せい)の大きな手に導かれて高花は進んでいく。 星の背中が怒っているように見えて、高花は妙に胸が苦しくなる。 「(せい)…もしかして、やきもち?」 訊いたが、彼は高花の手を引いて歩き続けるだけ。 結局返事は返って来なかった。 白い息を吐きながら、高花は笑う。 ーーーーそんな訳、ないね 脳裏を掠めるのは、あの戦時中の写真。 今こんなに近くにいる彼は、本当はどこから来た人なのだろう。
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