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「星の手が冷たくてビックリしただけだよ!
星のこと避けたわけじゃない…
ごめんなさい…わたし星のこと大好きだよ…!」
熱弁する高花の目には薄く涙が浮かんでいる。
星はそんな彼女の真っ直ぐさにたじろぎ、何も言えずに口元をキュッと結んだ。
「わたし…傷つけるつもりなんて…」
言いかけた高花の後ろから、「西沢!」と呼ぶ声がした。クラスメイトの男子たちだ。
この騒ぎを聞きつけて集まって来たのだろう。
高花が星から手を離し、振り返る。
返事をしようとして、出来なくなった。
急に星が高花の手を引いて、彼等とは逆方向に道を歩き始めたからだ。
「星!?」
「帰りますよ」
騒めきの中を、星の大きな手に導かれて高花は進んでいく。
星の背中が怒っているように見えて、高花は妙に胸が苦しくなる。
「星…もしかして、やきもち?」
訊いたが、彼は高花の手を引いて歩き続けるだけ。
結局返事は返って来なかった。
白い息を吐きながら、高花は笑う。
ーーーーそんな訳、ないね
脳裏を掠めるのは、あの戦時中の写真。
今こんなに近くにいる彼は、本当はどこから来た人なのだろう。
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