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「あなたは食べていてください」
「えっ??」
急になんだろう、と目を丸くする高花に背を向け、星は居間を出て玄関に向かう。
高花はしばらく彼の足音に耳を傾けていたが、学校の時間もあるのでとりあえず、
「いただきまーす」
箸を手に取り、テーブルに並んだ朝食を頬張る。
生クリームの入ったスクランブルエッグ、バジルウィンナー、やわらかく茹でたブロッコリーに玉葱たっぷりのマヨネーズ。
ミルクロールなんて星のお手製だ。昨日から生地を寝かせていたのを高花は知っていた。
まだ温かいミルクロールを左手、バターナイフを右手に持ち、すばらしい朝だなあ、と高花は思った。
「前じゃ考えられないよ」
独りごちて、バターが溶けかけたパンをかじる。
前はパンなんて食べたこともなかった。
祖父のおかげで借金取りに追われて、高花はずっと不安と隣り合わせの貧しい生活をしていた。
それが、星に引き取られてからは三食寝床付き。
文句の付けようがない。
とはいえ、星も高花も働いていないので収入源は全くの謎だが。
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