第1幕 高花と星(こうかとせい)

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「あなたは食べていてください」 「えっ??」 急になんだろう、と目を丸くする高花に背を向け、星は居間を出て玄関に向かう。 高花はしばらく彼の足音に耳を傾けていたが、学校の時間もあるのでとりあえず、 「いただきまーす」 箸を手に取り、テーブルに並んだ朝食を頬張る。 生クリームの入ったスクランブルエッグ、バジルウィンナー、やわらかく茹でたブロッコリーに玉葱たっぷりのマヨネーズ。 ミルクロールなんて(せい)のお手製だ。昨日から生地を寝かせていたのを高花(こうか)は知っていた。 まだ温かいミルクロールを左手、バターナイフを右手に持ち、すばらしい朝だなあ、と高花は思った。 「前じゃ考えられないよ」 独りごちて、バターが溶けかけたパンをかじる。 前はパンなんて食べたこともなかった。 祖父のおかげで借金取りに追われて、高花(こうか)はずっと不安と隣り合わせの貧しい生活をしていた。 それが、(せい)に引き取られてからは三食寝床付き。 文句の付けようがない。 とはいえ、(せい)高花(こうか)も働いていないので収入源は全くの謎だが。
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