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高花が朝食を食べ終わるころ、星が居間に戻ってきた。
高花は不思議そうに彼に訊ねる。
「どうかしたの?星」
「ああ、ポストを見てきたんです。」
「ポストを?」
聞いて、星の手元を見る。
だが、郵便物らしきものはない。
「……何も届いていなかったんです」
高花の視線に気づいたのか、星がそう言った。
今日も?と高花が声を上げる。
「おかしいなあ、
毎日こんなに何も届かないなんて」
「そうですか?普通でしょう」
淡々と答え、星がテーブルの食器を片付け始める。
高花が「あっ」と身を乗り出した。
「いいよ!今日は時間あるし自分で…っ」
テーブルに勢いよく差し出した高花の白い指先が、ふと、星の手に触れる。
「…っ」
ーーー動揺して手を引っ込めたのは高花で。
骨ばった星の手があまりに冷たくて。
とっさに星の顔を見る。
「片付けます。あなたは学校の時間があるでしょう?」
「あっ……うん、…」
上手く笑えないのは罪悪感があるからだと高花自身も分かっていた。
星が人間でないことなど出会ったときから知っているのに、高花だけがそのことに未だ心を乱す。
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