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ーーー前から分かってたことじゃない。
星は人間じゃないの。
自室に戻り、手提げ鞄に教科書を詰めながら高花は自分にそう教えてやった。
分かっているのに、体温のない星に触れるとどうしても平静を保てない。
ーーーなのに、何びっくりしてるの、私は…
言い聞かせて、部屋を出る。
学校に行けと言ってくれたのは星の優しさだ。普通の人間ではないだけで、彼は何も人と変わらないのだ。
それが分かっているからこそ高花には悔しかった。普通に対応出来ない自分が。
「よーし!次に星に触ってもぜったい普通にしてるぞ!」
意気込んで、高花は部屋を飛び出した。
玄関に行き、靴を履いていると星がやってきた。
「今日は何時にお帰りですか?高花」
「今日はクラブもないし、5時くらいかな?」
答えて、ふと見ると、廊下の棚に置かれた電話の電話線が抜けている。
「あれっ?電話線抜けてない?」
「ああ…本当ですね。後で差しておきます。」
そう答えた星の表情が翳っていることなど、高花には気付けるはずもなかった。
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