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鎮火していく炎のように、空が東から西へと傾いていく。
高花は渡り廊下で空を仰いだ。
ーーーーなんで、下から2番目?
はあ、とため息をつく。
小テストの結果、高花は下から2番目の順位で、今から資料室の整理の手伝いに向かうわけで。
階段を昇り、廊下の奥まで連なる一面の窓を見渡した。哀しいほど鮮やかな、超絶的な赤からの濃紺へのグラデーション。
さっきまでジリジリと雲を焼いていた夕焼けは、今や校舎のずっと向こうまで縮こまっている。その一方で、青く澄んでいく東の空には煌めく一番星。
溶けてしまいそうなほどうるうると輝くその星を見ていたら、そんな高花の前方に、ピンク色の髪の少女が現れた。
手足の長い、美しい少女である。
「アナタ、にしざわサン?」
ーーーこんな綺麗な子、この学校にいただろうか?
という想いは頭を掠めたが、高花はノーと言えない日本人。話しかけられたので普通に答える訳で。
「えあっ!?そ、そうですけど…何ですか?」
「資料室の整理ーーーー
あっしと、にしざわサン。
でしょ?いっしょに行かん?」
「う、ウン!いいよっ」
小テストの下から2番目が高花だった。
ならば、彼女はビリだったのだ。
ということは、高花と彼女は同じクラスということになる。
ーーーー同じ、クラス?
高花は眉根を寄せて、隣を歩くその美しい少女を見つめる。
「あの…違ったらゴメンね。私、
あなたのこと見たことないんだけど、
同じクラス…じゃあないよね?」
「あっしも、2-A…」
「じゃ、転校生?」
「先月な。あっし、目立たないからにしざわサン気づかなかっただけ…」
「イヤイヤ!ウッソだあ!
あなたみたいなコ、いたら気づくって!
しかも同じクラスでしょ!?」
ーーーー大体、転校生が来たのを知らない訳がない。
とはいえ、彼女とはなんとなく会話のテンポが噛み合わないし、自分で転校生だと言い張っているのだから、それでもういいと高花は諦めた。
「う~ん…なんか釈然としないけど、とりあえず名前聞いてもいい?」
「ローザ」
「ええ!?外国の人?」
「そう、リヒテンシュタイン…」
歴史は苦手だが、地理も苦手な高花は、
リヒテンシュタインかあ、行ってみたいなあ、
などと薄っぺらい言葉を吐いた。
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