第1幕 高花と星(こうかとせい)

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鎮火していく炎のように、空が東から西へと傾いていく。 高花は渡り廊下で空を仰いだ。 ーーーーなんで、下から2番目? はあ、とため息をつく。 小テストの結果、高花は下から2番目の順位で、今から資料室の整理の手伝いに向かうわけで。 階段を昇り、廊下の奥まで連なる一面の窓を見渡した。哀しいほど鮮やかな、超絶的な赤からの濃紺へのグラデーション。 さっきまでジリジリと雲を焼いていた夕焼けは、今や校舎のずっと向こうまで縮こまっている。その一方で、青く澄んでいく東の空には煌めく一番星。 溶けてしまいそうなほどうるうると輝くその星を見ていたら、そんな高花の前方に、ピンク色の髪の少女が現れた。 手足の長い、美しい少女である。 「アナタ、にしざわサン?」 ーーーこんな綺麗な子、この学校にいただろうか? という想いは頭を掠めたが、高花はノーと言えない日本人。話しかけられたので普通に答える訳で。 「えあっ!?そ、そうですけど…何ですか?」 「資料室の整理ーーーー あっしと、にしざわサン。 でしょ?いっしょに行かん?」 「う、ウン!いいよっ」 小テストの下から2番目が高花だった。 ならば、彼女はビリだったのだ。 ということは、高花と彼女は同じクラスということになる。 ーーーー同じ、クラス? 高花は眉根を寄せて、隣を歩くその美しい少女を見つめる。 「あの…違ったらゴメンね。私、 あなたのこと見たことないんだけど、 同じクラス…じゃあないよね?」 「あっしも、2-A…」 「じゃ、転校生?」 「先月な。あっし、目立たないからにしざわサン気づかなかっただけ…」 「イヤイヤ!ウッソだあ! あなたみたいなコ、いたら気づくって! しかも同じクラスでしょ!?」 ーーーー大体、転校生が来たのを知らない訳がない。 とはいえ、彼女とはなんとなく会話のテンポが噛み合わないし、自分で転校生だと言い張っているのだから、それでもういいと高花は諦めた。 「う~ん…なんか釈然としないけど、とりあえず名前聞いてもいい?」 「ローザ」 「ええ!?外国の人?」 「そう、リヒテンシュタイン…」 歴史は苦手だが、地理も苦手な高花は、 リヒテンシュタインかあ、行ってみたいなあ、 などと薄っぺらい言葉を吐いた。
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