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俺的には、メロンソーダを手に入れるというミッションをクリアできたので、夢云々はだんだんどうでもよくなってきていた。甘ったるいシュワシュワが、五臓六腑に染みわたる。
「でもさ、それだったらインスタントに叶う夢なんて夢じゃないよ」
「そうか……夢ってなんなんだー!」
神原が頭を抱えて叫ぶ。「うおー」とか「ぬあー」とか聞こえるが、正直言って恥ずかしいのでやめてほしい。
「神原、夢はさ、無理やり持つものではないんだよ。俺だって今はないよ?」
俺が神原の心に響く「名言」っぽいことを言えたので、神原は叫ぶのをやめて「なるほど」と何かを考え始めた。
「そっか。じゃあしばらくは、夢を持つことがオレの夢です」
追究していくと迷宮から抜け出せなくなりそうな結論に至ったが、神原が満足ならそれでいい。
俺も神原にならって持論を展開すると、夢は叶えるまでが楽しいんだと思う。すぐには実現できなそうなものを選ぶし、それが叶ったとしても、ほとんどの人が次の夢を見つけるからだ。そうなると神原の夢は、最強の夢かもしれない。
「……じゃあ俺も、神原と同じにするわ」
「いいね、お互いがんばろう!」
そう。互いに本気になれる夢が見つかるまでは、こうやってのんびりとメロンソーダを飲みながら、ノートを写す時間だって悪くない。
「お待たせしました、フライドポテト大盛りです」
「うわー!オレ、ポテトを浴びるほど食べるのが夢だったんだよねー」
小皿にケチャップを出しながら、満面の笑みでそう語る。
「……よかったね」
神原の中での「8%」は、案外高い数値なのかもしれない。
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