短編集

恋

恋というもののことはよくわからないが、私は自分が存外寂しがり屋なことをよく知っている。たまに、誰かに隣にいてほしいと思うことがある。そういう時は決まって、人に抱きつきにいったりする。抱きついて抱き締め返して欲しいと密かに思っていたりもする。相手は別に恋人でないといけないわけじゃない。親友だったり、心を許した人だったり。人に抱きつくと、ある程度心が軽くなる。ある程度といっても、気休めにしかならないくらい、ほんの少しだけだけれど。
傍にいてほしいと心から思う誰かは、いつも想像の中の人だ。現実の親友や心を許した人に、そう思うことはない。多分心の底から気を許している訳では無いからなのだと思う。なぜなら私は、その人たちに見離されても平気でいられるように、その人たちに抱き締め返されることを期待しないから。その人たちのことは好きだ、とても好きだ、なんなら大好きだ。でも私が本当に、私を癒してほしいと望むのは、その人たちではないのだ。