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恋をしてみたいと思ったことはないだろうか。 例えば冬、イベントが目白押しの季節。クリスマスにお正月、バレンタイン。クリスマス前になると「彼氏が欲しい」「彼女が欲しい」なんて声がいくらでも聞こえてくる。クリスマス前に付き合ってバレンタインの後で別れるなんてよく聞く話だ。 少しの間でも一緒に過ごして、楽しんで、それで別れるというのもそこそこ楽しいんだろう。けれど多分それは恋じゃない、と私は思う。私の恋の理想が高すぎるのだろうか。 そう言えば恋とはそもそもなんであっただろうか。今ではもうよく思い出せない。昔は私も、そんなものをしたような気もするのに。無駄に焦って、意気込んで、空回りして、とにかく大騒ぎしていたような覚えがある。ずいぶんとエネルギーを浪費していたんじゃないだろうか。それはきっと若さ故だろう。大騒ぎした割には、何かが起こったわけでもなく。何かが起きていたなら、この歳まで恋人がいたことがないなんてことはなかったのだろうか。 恋人ができたことがないのを恥ずかしく思うことはなかったが、ただほんの少し寂しさを感じることはあった。もし今恋人という存在が傍にいてくれたなら、もう少し心は軽くなるのだろうか、そういう時もあった。恋人同士で笑い合う人たちを見て、恋人がいるというのはどんな感じなのだろう、やっぱり幸せなんだろうか、と思ったり。けれどどこか自分とは関わりのない世界を見ているように感じたりもした。欲しいような気もするけど、手に入らないような気もする。羨ましいような気もするけど、本気で望んでいる訳でも無い。そういうものだ。私は恋というものが今もなおよくわからない。
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