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お店の扉をパタンと閉めて中へ入ってきたのは、二人の男性だった。
先頭に立っていたのは、まるで熊のように大柄な壮年の男性で、ナージュは大きく目を見開きびっくりした表情になってしまう。
なんとか「いらっしゃいませ」と声をかけると、大男はナージュを見下ろしてきた。
「ずいぶんと小さな店番だな」
大男の声は野太く、そして地を這うような低さだった。
ナージュは思わず身体をびくり、と震わせてしまう。ナージュの様子を横目で見つつ、大男は目の前にある黒い鋼の壮麗な鎧をに向き直った。
上から下までじっくりと眺め、腕を組んで何度も頷く。
しかし、なんて太い腕なんだろう! ナージュは大男の屈強な体つきから目が離せなかった。
こんなに筋肉がたくさん付いている人間を、ナージュはこれまで見たことがない。
「これは……ほぼ完成ではないか! なんと素晴らしい……!」
男のよく響く声に、奥からガリライが顔を出した。ガリライの姿を見とめ、大男がぱっと顔を明るくしてそちらへ向かう。
「将軍、ちょっと来るのが早いじゃないですか」
「はっはっはっ! すまんが、待ちきれなくてな」
二人は奥の作業部屋で何やら話を始めてしまった。なんと、今のお客様はこの国の将軍さまだったらしい。将軍は騎士隊の揃いの鎧ではなく、特別仕立ての銀色の板金鎧を装備し、深い藍色の軍衣を纏っていた。確かあの動きやすそうな板金鎧も祖父の作品だったはずだ。歩いていても金属がぶつかり合う音が極力しないことも、祖父の作品の特徴のひとつだった。
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