01.ナージュの小さな夢

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 その時ようやく、ナージュは黒い鎧の前に声もなく、気配もなく佇むもう一人の男性の存在に気づく。  まだ年の若そうな青年は、鎧を前にして固まってしまったかのようにぴくりとも動かない。  騎士服だったので、もしかすると将軍の従者なのかもしれなかった。 「あの、きっと二人のお話長いと思うので、どこか座って待ちますか?」  ナージュの提案に対して、男の人は「……いや」と曖昧に返事をしながらも、視線は鎧を見つめたままだ。  ナージュもまた、青年と同じように鎧に目を向ける。  ナージュから見れば、将軍もこの騎士も、首を曲げるほど見上げないといけないくらい背が高かった。  だが、立派な体躯の将軍の後に見ると、目の前の男の人はかなり華奢に感じた。  騎士服を着てはいるが、帯剣していないので、叙任はまだなのかもしれない。 「おじいちゃんの作る鎧、凄いですよね」  ナージュの言葉に、男の人はかすかに頷いたように見える。ナージュはまるで自分が作ったかのように胸を張った。 「私、いつかおじいちゃんの鎧よりすごいのを作るのが夢なんです」  青年は、ナージュを少し見て、そしてまた鎧に目を戻す。  無表情で感情の見えない騎士は、どうやらこの鎧に魂を奪われてしまったみたいだ。 こういう場面をナージュはよく目の当たりにした。それ位、ガリライの作る鎧には力があるのだ。
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