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「俺は、この鎧をいつか着てみたい」
ぼそり、と呟かれた言葉に顔を上げると、茶褐色の栗毛の奥にある鋭い藍色の瞳とぶつかった。ナージュは目を瞬いて疑問を口に出す。
「でもこれは将軍のですよ?」
男の人は、「そうだな……」と残念そうに声を落とした。それを見ていたナージュはいいことを思いつき、ぽん、と手を打つ。
「じゃあいつか、私があなたの鎧を作ります! 予約入れておきますね! お名前を教えてください」
男の人は呆気に取られて目を丸くしたが、そこで初めて破顔した。
「いいだろう……。俺の名はテンゲル」
ナージュは慌てて、近くの紙切れにその名前をさらさらと書く。ナージュの夢を形にしてくれる、第一号の依頼者様の名前だから、忘れたら大変だと思った。
「結構な予算が必要なので、それまでにお金たくさん貯めておいてくださいね!」
騎士――テンゲルは、ナージュの至って真面目な物言いに、ついにぷっと吹き出す。その笑顔は、ナージュの心を温かくした。
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