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――そして、時は流れて18年後。
甲冑師・ナージュの店に、王宮から驚きの手紙が届き、ナージュは工房で大声を上げる。
「ええっ!? 左岸将軍様、式典用鎧のご依頼ですって!?」
ナージュは26歳となり、亡き祖父の跡を継ぎ、国屈指の甲冑師となっていた。
この18年の間にどれだけの苦労と挫折を繰り返してきたか。
ナージュはいつしか祖父の工房で出会った騎士青年のことはすっかり忘れ去り、日々の仕事に追われる日々を送っていた。
「左岸将軍って、誰だったかしら? 確か昨年シグルド様がお亡くなりになって……うーん。名前が思い出せないわ……」
その時、あの子供の頃書いた走り書きが手元にあれば、あるいはナージュも思い出したのかもしれない。
だが、あの時の紙切れは作業机の引き出しの奥底で眠っていた。
「……これは大仕事だわ……。大変! 面会の日付まで指定されてる……! あぁ、私が将軍様の鎧に携われる日が来るなんて……! ついに夢が叶うのね……」
ナージュは相変わらずの色気のない作業着という出で立ちで、国からの書簡を片手に一人驚きと逸る気持ちに打ち震えていた。
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