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――何で俺は、こんなに興奮してるんだ……。
男は懊悩した。
だが、青年が与えてくる確実な刺激に、悩みや疑問さえ霧散していく。これはまずいと、そう思うのに、青年の巧みな動きが男の全てを絡め取っていた。
青年は華奢な体つきをしていた。
粗末な作業着から出ている肌は手と頭だけで、何も興奮を掻き立てるような因子はなかった筈なのに。
採寸の時に回された細すぎる腕や、ちらりと見える白いうなじ、そして石鹸の香りが混じった甘い体臭をふわりと感じた時、男の全てが狂ってしまったのだ。
気がつけば、男は青年を抱きこみ床に押し倒していた。
圧倒的な体格差と力の差があるのは目に見えて明らかだ。青年はあっという間に組み敷かれ、激情を顔に受かべる大男を前に固まっていた。
青年はただ驚くばかりで、拒否もしなければ罵る言葉さえも発しない。
ただ、「口で良ければ、します」とだけ。そして今、こうして奉仕されている。
恐らくは、青年は誤解しているのだろう。
男の性的な対象が「男」であると。そして、自分はそうではないけれど、依頼された仕事を完遂するためにできうる限りのことをしようと譲歩して、今このような事態になっているのだ。
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