00.二人の密約 ☆

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 男は青年の生真面目さと仕事にかける情熱を知っていた。  だからこそ、最悪の事態を回避しようと、青年は一所懸命に奉仕してくれている。その健気な姿が、内面的にも外因的にも男を刺激してやまなかった。 ――俺は最低だ。……こんなこと……。  そう思いながらも、青年が自分のものを舐め上げる熱心な様子を見て、男の欲望はさらに固く熱く滾る。 ――男に欲情したことなど、これまで一度もないというのに……。  男は深く懊悩した。  これから自分は一体どうすれば良いのか、答えはまだ見つかりそうもない。  トーンの違う二人の甘やかな息遣いが工房に響く中、男性にしては少し高めの柔らかな声が耳に届く。 「これは、二人だけの秘密ですよ……」  青年が漏らす甘い吐息を敏感な場所で感じ、ぞくりと身体を震わせた男は、考えることを止め、快感に身を委ねた。
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