01.ナージュの小さな夢

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01.ナージュの小さな夢

――なぜ父は「ナージュ」だなんて名前を付けたんだろう。  それはこの剣の国シャーデンを遥か昔救ったと伝えられる伝説の騎士の名前だった。  まだ神と魔物が大地を二分する古き時代、人間の住む国シャーデンをその剣技で支え、王を何度も守った屈強の戦士ナージュ。父はナージュの武勇伝が大好きで、自分の子にはその名を絶対付けると心に決めていたらしい。  ナージュはこの名前が大嫌いだった。  なぜなら、ナージュは女の子だったから。  父は可愛い一人娘に、あろうことか伝説の英雄の名前をつけたのだ。ほんの幼い頃は良かったが、成長するにつれ、ナージュはこの名前がどんどん嫌いになっていった。 「伝説の騎士様のお出ましだ!」 「や~い! 男女! 見た目も男っぽいもんな! 背だって高いし、見上げるこっちの首が痛くなるんだよ!」 「どんだけ髪の毛を長くしたって、ナージュは男女だ!」  毎日毎日、飽きることなく男の子たちはそう言ってナージュをからかってきた。特に幼馴染のアティの罵りは酷く、ナージュの心は幼いながらも傷ついたものだ。
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