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ノックもせずに扉を押し開けると、カラン、と小気味よく鐘が響く。
中に入ってすぐ目に飛び込んできたのは黒光りする荘厳な甲冑だった。
部屋の中央に飾られたその甲冑は、今ガリライが製作に励んでいる逸品で、国の将軍が式典で装着する予定のものらしい。
木の鎧立ての頭部には美しい曲線を描く兜が載せられていた。
黒い鋼に金の繊細な装飾が施されている。何か植物のイメージだろうか。
高い位置にあるためよく観察はできないが、まるで浮き上がっているかのように見える。
そして胸元には剣聖ガルドの顔を模したモチーフが配されていた。
胸から腹にかけて鷲の両翼をイメージした意匠が彫りこんであり、それもまるで目の前で羽ばたいているかのような迫力だ。
この全て、ひとつひとつをガリライは鋳造し、鋼を打ち、のみで叩き、タガネで彫る。
繊細でいて迫力のあるこれらが、全て手作業だということを知ると、初めて見た人は誰もが言葉を失う。それほどまでに、奇跡の技巧だった。
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