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地下鉄難波駅を降りて階段を少し上がると、香織の目の前がパッと開けた。
横幅のたっぷりある長い階段が続く。吹き抜けからは光がたっぷりと降り注いでおり、解放感がある。
その明るさに地下から抜けた、という実感がした。
ここでヒーローショーや激しいアクションシーンをやったらカッコいいだろうなぁ。
ゴロゴロと階段を転げ落ちるシーンとか迫力があるかもしれない。
香織はそう思いながら、階段横のエスカレーターに乗った。
階段を見て素敵だと思うことと、上りたいと思うことは別物だ。
そして今日は神様からの預りものを返しに行くのだから、うっかり転んで壊してしまった、なんてことは避けたい。
体力に自信のない自分には十分あり得そうなことだったので、万全を期したい。
左手に下げた大きめの紙袋を見て香織は大きく息を吐いた。
休日は出不精というより引きこもりになる香織が、神戸から二時間以上もかけて、電車を乗り継いで住吉に向かっているのは理由がある。
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