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紋付き袴を着た正座した猫で招き猫と言うより、マスコットキャラクターと言ってもいいつぶらな瞳が可愛らしい猫で、見ているだけでなんだか癒される。 二年弱しか玄関に置いていなかったのに、毎朝靴箱から見送ってもらうのが当たり前のようになっていた。 招く手が送り出してくれる手に見えていた。 毎月最初の辰の日に一体ずつもらえるものは親指より少し大きいくらいの小さな猫だ。 月によって招く手が右だったり、左だったりする。 それを四十八体集めて手のひらサイズの猫に交換してもらう。 手のひらサイズの猫を二体集めたら、次はヤカンぐらいの大きさの猫に交換してもらう。 返そうと思っている招き猫は一番大きな猫二体なので、48×2×2=192ヶ月つまり十六年、祖母はその間コツコツ参っていたのだろう。 その大きさの招き猫が住吉の社殿にズラッと並んでいると聞いた。見てみたい、と思った。 荷物が軽くなった気がした。香織は握り直してエスカレーターのステップを降りて南海の難波駅の改札を抜けた。
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