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すぐに見えたのは濃い青の少し威張ったようにも鼻が高いようにも見えるラピート。 その横に停車しているノスタルジックな普通車に乗り込んだ。 ここまで来たらあともう少しだ。 窓から通り過ぎていく景色をこんな駅だったっけと思ったり、新しくなったなぁと思ったりしている間に住吉大社に着いた。 降りてすぐに見えたのは自分の白い息と大きな鳥居と路面電車。 街の中にあるのにほっこりと心が温まるようなおおらかさは相変わらずに思えて、顔を突き刺すような寒さでも心が弾んだ。 石畳を歩くと太鼓橋が見えてきた。思わず止まる。 圧倒するような存在感で上ろうとした足がすくむ。 テレビなどで着物で渡っている人を見た時にはよく上れるものだ、と感心した。 近くで見ると意外と一段一段が高いのだ。 香織は悩んでから太鼓橋と並んでいる横の石橋を渡ることにした。 横から太鼓橋を見て綺麗だなぁ、と思う。 半月のような急カーブが天の川を渡す橋のようにも見える。 寒々とした空気にぽっかり浮かぶ赤い欄干は気高さと華やかさがあって目を惹く。 雪が降る日の太鼓橋の写真を見た時には小京都みたいな上品さと静謐さがあって美しかったが、目の前にある景色も穏やかさがあっていい。 本殿に向かう門をくぐり抜け、拝殿を一つずつ回ってから入った門とは逆方向にある門から出る。 砂利道を真っ直ぐ進むと社殿が見えてきた。 ここが目的の楠君社だ。
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