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賽銭を入れ、神様に手を合わせて「ありがとうございました」とお礼を言う。 その後で「祖母がお世話になりました。私の家は商売をしていないので招き猫を返しに来ました。お疲れさまでした」と付け加える。 他にも言いたいことがあったが、浮かんでは消えて纏まらない。 もう一度一礼しておしまいにした。 招き猫と目が合った。 お祀りしている神様の側に控えるように猫が並んでいる。 年月を経て白い毛並みが黒ずんだ猫はでんと座っている。 座布団に乗っている猫もいて貫禄はたっぷりだ。 招き猫たちのプレッシャーを感じながら、社殿の受付にいた神職に「猫を返しに来ました」と言い、紙袋から箱を二つ取り出す。 箱から一体ずつ慎重に出して並べる。 もうこれでお別れかと思うと、寂しくなって招き猫の手を触る。 「ニャー」 「え?」 猫の声がした。 まさか……。 まじまじと招き猫を見る。 「生きてる方の猫ですよ」 思わずと言った表情でニコニコと笑った神職に言われて香織が足元を見る。 真っ白な猫がいた。 「私がいる間は暖房してるからか、猫がどきどき来るんですよ。ここまで出てくる方が寒いと思うんですけど……」 「ああ、そうなんですか」 招き猫が鳴いたのかと思って驚いた。 ふわふわした柔らかそうな毛並みに触ろうとすると、手を避けてトコトコと外に向かう。 「ニャー」 そのまま行ってしまうのかと思われた猫が振り向いて甘えたような声で鳴く。 立てた尻尾がゆらゆらと招くように揺れた。
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