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「なあに。」
「守ってやれなくてゴメン。」
「何言ってるの。あたしよりあなたの
ほうがずっと重傷じゃない。」
「おまえは女なのに、顔に傷を作っち
まった。しかも、嫁入り前だ。」
そんなことは言わないで。いつものように
軽口を叩いてあたしを怒らせて。これ以上
泣かせにかかったら、後で仕返ししてやる
から。
「三針縫っただけよ。あたし、まだ二十七
だもん、いずれ目立たなくなる。もし、
この傷を理由にあたしを選ばない男がいた
ら、こっちから願い下げ。だって、この
傷はあの場所でテロがあったことを証明
しているのよ。歴史の生き証人なんだから、
受傷というより寧ろ英雄の勲章だわ。」
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