あいつ

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何か助けになれたらと思った。 何か支えになれたらと思った。 だけど、僕はあいつのことを深くは知らない。 あいつの為にと思う自分に浸るだけのエゴイズムでしかないのかもしれないと思うとそんな自分に吐き気がした。 あいつは今日も笑っている。 口が悪いから最初は身構えて、でも段々とそれが心地よく感じるようになっていた不思議。 僕とあいつは似てはいないけど。 僕は別に興味もなかったけど。 あいつはしつこく付きまとってくるから。 そうして嫌でもあいつのピアノが耳に入ってしまったから。 僕は今そのことが深く深く悲しいんだ。 あいつのことが悲しいんじゃない、ましてや同情でもない。 ただ、あいつのピアノの旋律が悲しかったんだ。
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