プロローグ

2/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
思い出すと彼女との出会いは、偶然が重なり、むしろ誰かが出会わせるように仕組まないといけないぐらいの確率だったと思う。もし、そうであれば、どうして出会ったのか、出会わせたのか聞きたい。でも、もうそれはできない。なぜなら… スクールカウンセラーを始めて3年目。配属された当初は、教員からの信頼は皆無で、教員入れた方がいいのでは、と影口を叩かれていた。だが、教員たちと話をして、1人の不登校生徒を、登校させたことで、状況は一変。多くの教員から相談をもちかけられ、時には教員のカウンセリングもするまで、認められるようになった。教員たちの宣伝効果もあり、生徒直々に希望者も増え、今では多くの予約で埋まる日々が続いていた。そのような中、「先生、相談があるんです…」。その女子生徒は俯き、どうにもならない気持ちを持ってスクールカウンセラーの部屋へ。話を聴くと、両親が離婚するかもしれない、おばあちゃんが入院するかもしれない、家族がばらばらになってしまうかもしれない不安を打ち明けた。「いろいろ重なって、何をどうしたらわからなくなっちゃんだね…」。女子生徒は、これまで抱えていた想いを涙に変えて、ようやく外に出すことができた。その後も、週1回のペースで話を聴き、必要があれば、いつでも駆けつけることを伝えた。 カウンセリングを始めて、数ヶ月が経った頃、悩んでいたことは落ち着いてきたため、ひとまず中断することになった。だが、女子生徒は雑談がしたいと希望したため、仕方なく付き合うことにした。お父さんはいつも帰りが遅く、 ご飯を作るのは、おばあちゃん。でも、おばあちゃんが作れない時は、女子生徒が作り、妹の面倒もみていた。そのこともあってか、女子生徒は高校生らしくなく、とても落ち着いており、話をしていると、仕事をしている人と話している錯覚に陥ることもあった。そのため、女子生徒と話す時は、先生と生徒というより、大人と大人が話すような感じだった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!