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死した姉の名をいただいたこの名前が、昔は愛おしかった。
何よりも大切にしていて、何よりも誇らしく――生きられなかった彼女の分まで懸命に生きようと決意した。
けれど、姉は姿を地位を変えて生きていた。のうのうと、“クレア”という名前のまま。
私の姉は――二度死んだ。
生まれてすぐと、私の中で、もう一度。
「さて、その美しい名をどうお呼びしたらよろしいですか?」
「す、好きに呼べ。それよりその歯の浮くようなセリフをやめろ」
「真実を述べているだけですよ。あなたは顔も髪も瞳も美しいのに、そのうえ名前まで美しいとなると……」
「うるさいな! シェ―ナと呼べシェーナと!」
「……様、はいらないので?」
「いらん。私も、コウと呼ぶしな」
あまりにまっすぐすぎる視線から逃れるように目を逸らし、グラスの中身を飲み干した。
どうかしている。
この男の前では、一国の姫ではなくただのシェーナでいたい――だなんて。
冷静な頭を裏切る心に絶望して、戸惑って。喉がもうからからだ。
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