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広大な西大陸の中でも、最も大きな国――ウェールズ。
きらきらと水面を輝かせる小川は街のあらゆるところに流れていて、青々と茂った緑も、瑞々しく育った作物たちもどこの国より豊かだった。
そのすべてを、現国王――アグレスは絶やさぬようにと日々努めてきた。
大きな背中をすぐ傍で見つめ続け、私も同じようにいつかは立派な王になるものだと信じて疑わなかった。
その想いが初めて揺らいだのは――いったいいつだったか。
「……ェーナ様」
アグレスは――父は、私を愛してはいないと知ってしまったのは、遠いあの日。
「シェーナ様、……クレシェーナ様!」
「……何だ」
「ゆ、夕餉の準備が整いました」
「お前、わたくしに仕えてどのくらいだ」
「え……え、えと、あの」
おどおどとした態度の侍女の反応に苛立ち、テーブルの上の物をすべてぶちまけた。
けたたましい音をたててティーカップや花瓶が粉々になっていく。
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