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「わたくしの真名は決して呼ぶなと、最初に言ったはずだ」
「で、ですが何度お呼びしても反応がなかったので、」
「言いつけを守らないうえ、口答えまでするか」
「シェーナ様、違、」
真っ青な顔の侍女を鋭く見据えれば「ひっ」と小さく怯えた。
……こうなることがわかっていて、なぜ過ちを犯すのか。
私に仕える時に注意すべき点については口うるさく言われていたはずだ。聞いてないとは、言わせない。
「お前の役目は今日で終わりだ」
「そん、な……そんな、困ります……!」
へなへなと座り込んだかと思えば、弁解混じりにドレスの裾を掴んで縋ってくる”元”侍女の顔は涙に塗れて汚らしい。
泣き叫ぶ声が耳障りで腹立たしく、その手を足で払って踏みつけた。
「いた、っ……シェーナ、様ぁ……っ」
「さっさと消えるがいい。目障りだ」
涙で濡れた瞳は絶望に揺れている。
その瞳に映る私の顔は、およそ一国の姫がしていいそれではない。
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