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クッと笑いが漏れた。
――だから、父は私を認めないのだ。
こんな、怒りに満ちた顔で従者を見下ろす姫など。
だが、そうさせたのは――その父だ。
私がこんな風になったのは、すべて父の――死したはずの、姉姫のせいだ。
謝罪を繰り返す女の声を背に、ふらりと部屋を出た。
扉のすぐ傍で控えていた護衛兵がギクリと肩を揺らしたことにまで苛立ち、引き止める声を無視して階段を下りていく。
怒りをまとったまま宿屋の中庭まで出て、空に広がる無数の星を見つめた。
数え切れない星と同じほどの人間が、この世界には存在している。
――けれど、私はいつだって独りきりだ。
信じていた両親も、初めての親友だと思っていたクレアも――全部。全部全部、まがいものだった。
誰も、傍にはいない。
ずっと救いを求めて伸ばしている手を、掴んでくれる人はいない。
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