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「こんな夜更けにどうしました。お嬢さん」
各国の王子だけでなく親子ほど年の離れた王や貴族など、見知らぬ男からの誘いにはもう慣れていた。
誰もが皆、“ウェールズの第二王女シェーナ”を求めていた。
「気安く話しかけるな」
「そうは言っても、そのように美しい顔を歪められては放っておけない」
「減らず口を……わたくしを誰だと、――」
侮蔑をたっぷりと含んだ言葉は、そのまま咥内で押し留まった。
不覚にも、見たことのない風貌の男に目を奪われる。
「見知らぬ女性に不躾かとは思いましたが、つい気になって」
「……お前、わたくしを知らぬと言うのか」
「? この国のことには疎くて――申し訳ない」
「いや、……では、わたしくが誰とも知らぬのに、声をかけたと?」
まっすぐにこちらを見たまま頷かれ、どくりと胸が高鳴った。
これまで近付く男は皆、私を介して父に取り入ろうとする者ばかり。
うわっつらの褒め言葉ばかりを並べて機嫌を窺って――。
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