7人が本棚に入れています
本棚に追加
「私の名前はコウ。東の国――大倭の出身でございます」
「……海で囲まれた島国の?」
「良くご存じで」
「珍しい名だが、国に伝わるものか」
「ええ。大倭の言葉です」
掌を上に向けるよう促され、思わず従う。
人を従わせてばかりだった――この私が。
掴まれた手首も、掌も。彼の触れるところすべてが熱い。
身を引こうとする私に気付いているのかいないのか、平然とした顔でコウは文字らしきものを掌に書いていく。
「紅(くれない)と書いて、コウです」
「くれない……? どういう意味だ」
「赤です。血のように鮮やかで濃い、赤です」
その名のとおり、男の髪は血のように赤い色をしていた。
ウェールズではまず見かけることのないその色に、むくむくと興味が湧いてくる。
大倭は各国の調査団がこぞって探求を進める未開の地だ。
そこに住まう者たちがどういう生活をしているのか、どんな風貌をしているかなど多くが謎に包まれている。
最初のコメントを投稿しよう!