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――――それで?
目の前のこの人もそういう事情に屈してここにいる……ということだろう。
だって結構なイケメンっぷりだ。
相手には困っていないはず。
「こんな事言うとあれなんですけど、結婚はしなくないんですよ。しかも『お見合い』って……」
別にどうなろうと知ったこっちゃない、雅が真っ先に口を開く。
驚いた様な顔をして目の前のイケメンが顔を上げる。
「あ……僕もです。お世話になっている方の手前……ですね」
ハハハと笑う。
予想通りこの人も同じ境遇だったようだ。
そうか……気の毒に。
「……実は2度目なんですよ。結婚するまで必ず世話してやる、とか言われちゃいまして」
「彼女とかいないんですか?」
出会ってまだ5分。
見合いの席でこんなストレートな質問を雅はぶつける。
「いたら、ここにはいませんよ」
「たくさんいそうなのにねぇ……」
しまったと雅が口に手をやる。
「あ……すみません。違うんです。かっこいいからモテそうってことです」
「全然全然」と顔の前で焦って手を横にふる。
「それで1度目はどうしたんですか?」
「……申し訳なかったんですが、こちらからお断りさせてもらったんです。でもすぐに……徳重さんをご紹介されまして……」
「あららら。ずっと続くんでしょうねえ」
ミヤビの言葉に目の前のイケメンがわかりやすく肩を落とす。
「気の毒に」
雅は今度はそれを声に出した。
「…………よければ協力しましょうか?」
「協力……?」
「つき合ってるフリくらいならいいですよ? 私も特定の人とかいないですし」
雅の申し出にイケメンの顔がパッと明るくなった。
「いいんですか!?」
「ええ、ずっとは無理でしょうが、お見合いとか面倒でしょ? 口裏合わせくらいドンと来いですよ」
イケメンは立ち上がると手を差し出してきた。
「よろしくお願いします」
「あ、こちらこそ」
ビジネスライクな握手をすると、連絡先だけ交換して二人は別れた。
まあ、ラインでちょこっとやり取りするくらいだと考えていた雅は、予想外の家族の反応に困惑する。
それはお見合い相手の佐藤高晴も同じだったようで……。
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