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雅がお酒が好きだと言ったので、そのままそこでお酒も勧めた。
彼女は遠慮無くとワインを注文する。
不覚にも泣いてしまった。
やっぱりそれは恥ずかしい。
初対面に近い女性にどんな白い目で見られるのかと思ったけれど、目の前の彼女は本気で気にしていないようだ。
ワインを飲むとその口も滑らかになる。
いつの間にか彼女は敬語を忘れ、「高晴はさあ~」なんて超フランクに砕ける。
こういう酔っ払いは嫌いじゃない。
さっきのあれは本当の気持ちだったらしく、映画の『ショットガン・アイズ』の話が止まらない。
その砕けっぷりに高晴もいつの間にか「雅」と彼女を呼ぶ。
「あれは無しだよね。あたしは何が死んでも泣かないけど、犬は殺しちゃダメなんだってぇ!!」
グーでテーブルを叩くふりをする。
「だよね、犬はダメだよね? 僕も犬だからグッときちゃってさ。断じて主役の男じゃ無いから!」
そこのところは絶対彼女に伝えておきたい。
「いいのに、もぉー」
ニヒヒと声を出して雅は口に手を当てる。
本当にニヒヒと笑う人を初めて見た。
このままからかわれないようにグラスにワインを注ぐ。 ボトルもこれで空だ。
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