7.ななみの正体とその想い

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7.ななみの正体とその想い

「ただいまー」  振り返れば南野さんが戻ってきた。話を聞いたけど、やっぱり生きているようにしか見えない。 「おかえりなさい。ななみさん」  早速日野前くんが返事をする。 「卓くん、告白は出来た?」 「は、はい……」 「それは良かった。で、岡崎さんからの返事は?」 「それがまだ……」 「そっか。ねえ、岡崎さん。彼、悪くないと思うんだけど、どう?」  南野さんがセールストークをしてきたのだが、私は彼女に聞いてみたいことがある。 「ねえ、さっき日野前君から聞いたんだけど、あなたはもう、亡くなってるのよね。どうして生きている人みたいに振る舞えるの?」  少しの間沈黙して、南野さんが話し始めた。 「付喪神(つくもがみ)って知ってる? 大事にされた物に神様が宿るって話」 「それは聞いたことあるけど、その付喪神になっちゃったとか?」 「正確に言うとちょっと違うかな。南海の電車はね、寿命が来るまで何十年もとても大切に使われるから、付喪神になるものも多いの。 【さようなら7000系】ってついた電車もその一つで、付喪神になるときに力を借りたの。だから今、霊感がない人にも姿が見えるし、軽いものなら持てるの」  おとぎ話、ではある。でも彼女がうそを言っているようには見えない。 「あの電車は廃車になるから、あと1週間の【命】なんだけどね」  それを聞いてはっとした。あと一週間しかないのに、日野前君のためにここまでした。南野さんは笑顔を崩さないけど、その裏に寂しさが見える。 「そうそう、日野前君の告白の返事、まだよね。聞かせてくれない?」  私は、返事を決めた。
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