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「ごめんなさい。いますぐにはお受け出来ません」
「ええーっ!?」
驚く二人に私は説得するかのように話し始めた。
「日野前くんの気持ちはうれしいし、南野さんも善意でしてくれたことはわかりました。でも」
「でも?」
「彼、私の想像と全然違いました。ぐいぐい引っ張ってくれるのかなと思ったら、メモ帳見ながらのデートがやっとだし、告白も南野さんがプランニングしたものですよね?」
「それは、でも、僕は本当にあなたが好きで」
私が好きだということを強調する。それ以外に言うことは無いのだろうか、どこか自分に自信が無さそうだ。
「だから。お友達から始めましょう。両片想いみたいだったし、これから、お互いのこと、ちゃんと知ってから、改めて、ね」
私の答えに二人は黙ってうなづいた。
「もう一つ、南野さんは、本当は日野前くんのことが好きでしょう?」
「え、あ、何言ってるの、あなた」
「幽霊になっても彼とお話しをして、最後には付喪神の力を借りてまで、ここまでのことをしたんですよね。よっぽど好きじゃなきゃ出来ないと思います」
「……お見通し、ですね。恋の相談をされた時は複雑だったけど、もう私は死んでるんだし、願いを叶えてあげたいと思って……」
日野前くんが絶句したのをみて、私はこちらに話を振る。
「日野前くんは、気づいてた?」
彼はうつむき気味に首を横に振った。
「だったら、南野さんと二人で最後の時間を過ごして欲しい。私はこれからも生きてるよ。でも、南野さんはいなくなっちゃうんだよ」
「うん……」
「あなたの気持ちをくんで、ここまでしてくれた南野さんのこと考えた?」
「……」
「あと一週間、あなたたちの時間を過ごして欲しいの」
「はい……」
「岡崎さん、あの、ありがとうございます」
南野さんの言葉に私は静かにうなづき、日野前くんと連絡先を交換し、その場を後にした。
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