1.空港急行は急を告げ

2/2
前へ
/13ページ
次へ
 電車はなんば駅を発車。夜の街をモーター音を響かせて快調に飛ばしていく。私は横目で二人を見ている。やっぱり仲が良さそうだ。  あれこれ考えているうちに、岸和田駅に到着。彼は彼女に手を振って降りて行った。  ひとりになっても(もともとひとりだけど)あの娘の正体が気になる。お姉さんとか!? そうであって欲しいけど、まさか先生との禁断の恋とか!? 「私のことが気になるの?」  勝手に盛り上がっていると、突然女の人に話しかけられた。はっとして振り向くと……、さっきの彼女だった。 「な、なんですか急に」 「とぼけてもムダよ。私と卓(たく)くんのこと、見てたでしょ?」 「あ、えー……」  そうか、卓くんって言うんだ、って、いきなりなんなの? しどろもどろで何を答えていいのかわからない。 「私は南野ななみって言うの。彼とは子供の頃からのお付き合いよ。そうそう、お近づきの印にこれをあげるわ」  彼女に1枚のきっぷを渡された。 「私は彼女じゃないけど、彼とは日曜日にみさき公園で一緒に遊ぶことになってるの。それじゃあね」 言うだけ言って去って行った。一緒に遊ぶってデートじゃない。自分より美人なのもあわせて本当にねたましい。  切符を見ると『乗車券・座席指定券 泉大津(9:15発)→みさき公園(9:32着) 特急サザン7号』日付は今週日曜になっている。  これは何? 挑戦状ってこと!?  私はわけがわからなくなってきた。わかることは、見ているだけで十分だと思っていた日常が崩れていくことぐらいだ。  いつもの泉佐野で降りたが、気持ちはぐらぐら揺れだす。  日曜日、どうしようか……
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加