42人が本棚に入れています
本棚に追加
6.返事の前に聞きたいこと
「だめ、ですか?」
「あ、あの、急に、言われても……」
いきなりの告白、心の準備が出来てない。
ん?
ふと、南野さんを思い出した。いきなり切符を渡されてここにきたかと思えば、いきなりデートして欲しいとか言われたり。これは何かがおかしい。
動揺はおさまらないが、彼に改めて聞いてみる。
「日野前くん、あの、今日のデート、なんだかおかしい気がするの」
「おかしい、ですか?」
「そう。南野さんは強引に私たちをデートさせてたけど、いきなりつきあってくれたらうれしいとか言い出すし、ねえ、あの人はいったいなんなの?」
しばらくの沈黙。そして。
「信じてもらえないかも知れないけど……、ななみさんはね、1年前にもう死んじゃったんだ」
「死んじゃった!? じゃあ南野さんは幽霊だっていうの? 信じないわよ。そんなの」
「だよね。信じられないよね」
「日野前くんは霊感あるの?」
「僕もあんまり霊感はないんだけど、幽霊になった時から、ななみさんが僕のそばにいるのが
見えるんだ」
「霊感がないのに見えたの? そんなに仲が良かったの?」
霊感がなくても、生前の関係が深かった場合はまれにその人の幽霊だけは見えるという話を思い出した。
「うん。うちのすぐ近くに住んでて、子供のころからよくいっしょに遊んでた。受験のときとかも、いろいろと気にかけてくれて……」
「そうだったの……」
なぜか妙に納得してしまった。
しかしそれなら、なぜ生きているに人間と同じように切符などを持つことが出来たのだろうか? 疑問は尽きない。
最初のコメントを投稿しよう!