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ナシェルは寝台の上に仰臥し、上から父王の熱い眼差しを浴びていた。父の紅い瞳の奥で情欲が燃え盛っていることは疑いようもなく明らかで、王子は恐怖にその身を固くする。
「さあ、服を脱いで」
父の声色が突如、断固たるものに変わった。
これから甘美な教示が歓びとともに己の躯に降り注いでくるのだと、ナシェルははっきりと理解した。
そして王の視線に煽られ己の色情までもが小さな種火のごとく燻り出すのも感じていた。
心の奥にある淫欲を、すでにこの歳にして知ってしまっているナシェルは、他の神々と比することはできないにしても早熟には違いない。
たとえ彼らが神族という、他の常識の当てはまらぬ種族であったにしても、それはまだ魂に根を張り芽吹くにはあまりに早すぎるものだというのに、すでにその種は沿い臥の夜々に少しずつ、ナシェルの内部に植えつけられてしまっていたのだ。
天幕の外からは、あの不気味な風音に混じって、魔族たちが盛り上がる声が聞こえてくる。酒宴がはじまったのであろう。
彼らと自分たちを隔てているのは魔獣の皮をなめして作った天幕と、簡易の衝立だけだ。あまりに心許ない。普段はひっそりと閉ざされた王の褥の奥で行うはずのそれを、今、こんな場所で強要されているのだ。
ナシェルは首を振って拒絶の意を示したが、そもそも選択肢は用意されていないようだった。父はナシェルの両脚の上に跨るような形で下肢の動きを封じ込めているのだ。退路はない。
王は己の服を寛げはじめた。眼差しは幼い王子に注がれたままだ。
王の、鎖骨から肩にかけての隆起が露わとなる。帯が解かれ、次々に脱ぎ捨てられてゆく装束。ナシェルは王の引き締まった艶麗な裸身を目の当たりにし、思わず頬を染めた。
「早くしなさい。余を待たせるつもりか?」
抗うことを認めぬ態度に、ナシェルはなすすべなく従うしかなかった。
「………はい、父上」
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